有給休暇とは
有給休暇とは正式には年次有給休暇といいます。
年次有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことで、『有給』で休むことができる、すなわち取得しても賃金が減額されない休暇のことです。
年次有給休暇が付与される要件は2つあります。
(1)雇い入れの日から6か月経過していること
(2)その期間の全労働日の8割以上出勤したこと
の2つです。この要件を満たした従業員は、10労働日の年次有給休暇が付与されます。パートやアルバイトの従業員も同様に適用されます。
雇入れの日から起算した勤続期間 | 付与される休暇の日数 |
6か月 | 10労働日 |
1年6か月 | 11労働日 |
2年6か月 | 12労働日 |
3年6か月 | 14労働日 |
4年6か月 | 16労働日 |
5年6か月 | 18労働日 |
6年6か月以上 | 20労働日 |
有給休暇の繰越
『有給休暇を10日取得したけれど、使うタイミングがなかった』などで使いきれなかった分があるとします。付与日から2年以内であれば、消化しきれなかった分の有給休暇を引き継ぐことが可能です。
ただし繰越すことができる上限が決まっているので注意が必要です。最大で20日の繰越が可能で40日まで保有できます。
例えば『今年度35日の有給休暇があったのだけれど翌年度には20日までしか繰越せないため15日が消滅してしまった...』ということもあり得るのでこまめに有給休暇を使用することをお勧めします。
ちなみに、企業の判断で法で定められた日数よりも多く有給休暇を従業員に与えることは違法ではありません。『労働基準法で定められた年次有給休暇を与え、なおかつリフレッシュ休暇を3日与える』といった行為は全く問題なく、消滅時効も企業が自由に設定できます。
有給休暇はアルバイトやパートでも繰り越しできる?
パートやアルバイトであっても有給休暇を繰越が可能です。
正社員と同様に、有給休暇の繰越の期限は2年間と定められています。
有給休暇の時効(有給が消失してしまうまでの期間)は、付与日から起算して2年間が有効で、2年間を超えてしまった有給休暇に関しては、消失して使用することができなくなります。
また2019年に施行された働き方改革関連法によって、5日の有給取得義務が課せられるようになりました。パートやアルバイトの従業員も同様に適用されます。
消失してしまった有給休暇
せっかく取得した有給休暇も、取得してから2年を過ぎると消失してしまいます。1年間は繰り越せますが、繰り越しても有給休暇が余ってしまった場合は、『有給休暇を企業に買い取ってもらいたい』と考える方も多いかもしれません。こういった場合、企業は買い取りを拒否することができますが、これは違法ではないので注意が必要です。買取を拒否されこれが違法でないとすれば、従業員ができることはこまめに有給を使用して休むことに尽きると考えます。
会社都合の有給休暇は違法
有給休暇を使うタイミングを逃してしまったり、多忙で気づいたら有給休暇を全く使用していなかったということがあると思います。この状況は企業にとって違法行為となるため、従業員が有給休暇を使用して休んでいない状況を企業側は好ましく思いません。こういった場合に企業が従業員に有給休暇を消化するよう持ち掛けてくることがあります。
例えば『今日はスタッフが足りているので有給で休んでください』や『パソコンの調子が悪く修理するので明日は有給を使って休んでもらいたい』
など会社都合で勝手に有給を消化すると、従業員の権利を侵害することになってしまいます。
従業員が自由に選択できない有給休暇の消化は違法行為であるため、企業側も従業員側も注意が必要です。
ただし、有給休暇には事業の運営が妨げられる場合に従業員に対して、他の時期に振り替えて休暇を与えることができる権利が企業にはあります。これは違法ではないので従業員の方は注意が必要です。
年間5日の取得が義務化
労働に関する最低基準を定めた労働基準法も働き方改革関連法の施行に伴い一部改正がなされました。それが年次有給休暇の5日取得の義務化です。年次有給休暇の5日取得の義務化により、年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員に対して、年次有給休暇のうち年5日について従業員が取得していない場合、会社が時季を指定して取得させることが義務付けられました。この従業員の範囲には管理監督者も含みますのでご注意ください。
実務的には、年次有給休暇が10日以上付与される従業員の洗い出し、年次有給休暇の取得状況の把握、把握時点で5日未満の従業員に対して取得勧奨するとよいでしょう。その後、取得勧奨しても取得しない従業員に対して時季指定を実施するような流れになるものと思います。
時季指定をするにあたっては、従業員の意見を聴き、できる限り従業員の希望に沿った時季になるように努めなければなりません。
労働基準法には違反した企業(使用者)に対する罰則が第117条から第121条にかけて規定されています。年次有給休暇を従業員が請求する時季に与えなかったり、従業員に対して年次有給休暇を一年度あたり5日取得させなかったりすると30万円以下の罰金に処せられることがあります。
有給休暇に関する罰則
年次有給休暇の5日取得の義務化に反して従業員に5日年次有給休暇を取得させなかった場合、労働基準法第120条の規定により30万円以下の罰金に処せられることがあります。これは対象となる従業員1人につき1罪と取り扱われるため、例えば10人に対して取得をさせていなかった場合、300万円の罰金刑ということになります。
ただし、違反すると即罰金というよりは、労働基準監督署の監督指導により原則として是正に向けての改善指導がなされます。
消失してしまう有給休暇は非常に多い
働き方改革が施工されてから大分経過しましたが、実際はどのくらいの人が有給を使用して休んでいるのでしょうか。
個性労働省によれば、取得率は 58.3%(昭和 59 年以降過去最高)ということなので約6割の方が有給を使用して休んでいるということです。この結果をふまえ考えると使用されずに消失してしまっている有給休暇は決して少なくないと言えるのではないでしょうか。
他にもあるこんな有給休暇
労働基準法のよると、有給休暇以外に様々な休暇が用意されています。その中でも産前産後休業と生理休暇について調べてみました。
労働基準法第65条産前産後を見てみます。そこには、『出産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)は従業員からの請求があった場合には会社は休暇を与えなければならず、また出産後8週間は原則として休暇としなければならない』と規定されています。この休暇は産前産後休業と呼ばれます。
『生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置』として、労働基準法第68条に定められている休暇のことを、一般的に生理休暇と呼びます。生理休暇は女性従業員が生理により働くことが著しく困難であるとして請求した場合に付与しなければならないとされています。
産前産後休業と生理休暇は年次有給休暇とは異なり、どちらも有給である必要はありません。年次有給休暇と異なる点がもうひとつあります。年次有給休暇は事業の運営が妨げられる場合、他の時期に振り替えて休暇を与えることができる権利が企業にはありますが、産前産後休業や生理休暇は従業員が請求した日に付与しなければなりません。例えばどれだけ人手不足に陥ったとしても企業は休暇を与える時期をずらすことはできないのです。
休暇とひとくくりにいえども、休暇の種類によって性質は異なります。このような違いを従業員側も企業側も注意して理解しておくことがいいと思います。
有給休暇はこまめに使った方が良い
『なんとなく有給休暇を使うのは気が引ける』『ほかの人に悪いから』と有給休暇を使用することに罪悪感を覚える方も多いと思います。ですが有給休暇は従業員に与えられた正当な権利なので誰に気を遣うでもなく堂々と休んでいいと考えます。有給休暇を使用せず期限切れになって消失してしまうことはとてももったいないと思うので、こまめに使用することをお勧めします。
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